- 2009/11/06 : 「珍妃の井戸」 浅田次郎
- 2009/11/05 : 「蒼穹の昴」 浅田次郎
- 2009/11/04 : 「COW HOUSE」 小路幸也
- 2009/11/03 : 「夢うつつ」 あさのあつこ
- 2009/11/02 : 「るり姉」 椰月美智子
![]() | 珍妃の井戸 (講談社文庫) (2005/04) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝最末期の北京。その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?犯人探しに乗り出した日英独露の高官が知った、あまりにも切ない真相とは―。 (「BOOK」データベースより)
「蒼穹の昴」と同じ世界観、同じキャラクターで書かれた清朝末期の歴史もの。続編というには物足りず、スピンオフ小説というのが一番近いかもしれません。
義和団の乱の際、列強たちが中国を襲う中、後宮の妃が井戸に投げ込まれ、死亡した。それはつまり、天子もいつ暗殺の危機にさらされるかわからないということ。日本・イギリス・ロシア・ドイツ、それぞれの国から遣わされた男たちが、真相を探り出すべく関係者たちの間をめぐって調査を始めるが・・・。
ひとりの証言を、次の証言者が覆す という形式で連なっている作品で、ミステリとしては王道なのだけれど、まず間違いなく「蒼穹の昴」を読んでいない人には物足りない話になっていると思います。
そして結末も、ミステリとしては不十分。何故みんなが真相と異なる証言をしたのか、また最後の証言の信憑性は、と、謎はいくつも残ります。
ただ。
単行本発行の際の帯に書かれた、「愛の物語」という観点でいくのなら、これほど見事な終わり方をしている話もないでしょう。
最後の一章を書くために、浅田次郎はこの物語を書いたのではないかと思います。
(75点)
読み直しました! 長かったよ。
![]() | 蒼穹の昴(1) (講談社文庫) (2004/10/15) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
清朝末期の中国を、浅田次郎なりの解釈で描いた物語。
「権力にしがみついて国を傾ける悪女」と見られてることで、長く続いた王朝を終わらせる覚悟を決めた西太后の物語。
あまりの貧しさに自らの手で宦官となった春児とその妹、そして春児の兄と義兄弟の契りを交わしていた王逸あたりが主軸の話なのだけれど、歴史大河小説として読み応えあり。
登場人物はかなり多いので、(そして似た名前の人もそこそこいたりする)メモ片手に読んだほうが吉かもです。
私はこの小説を最初に読んだ何年か前、「母の愛って偉大だなあ」と思った覚えがあるのだけど、今は「上手く手を離してやるのも母親に必要な才能だなあ」と思いながら読みました。
ものすごく華々しい山場があるわけではないのですが、(時代の流れに即しているので)登場人物たちの心情を丹念に描いた力作です。
(80点)
そして。
続編に当たる「中原の虹」を読んでいないことが判明しました。急いで探します。
![]() | COW HOUSE―カウハウス (2009/06) 小路 幸也 商品詳細を見る |
社会人としてやってはいけないことをやってしまって、左遷された畔木。新しい仕事はお屋敷の管理人。やってきた早々、屋敷内のテニスコートを無断で使っている少女と老人の二人組みに出会うのだが…。
小路さんの作品は、「おとぎばなし」だと思うのです。
決定的に悪い人のでてこない、「いいひと」たちが集まって、困難に立ち向かう話。
主人公の畔木。恋人の美咲。無人老人と、天才ピアニスト少女ふうか。
そして一番存在感のある、坂城部長。
話の主軸の一つにふうかの「才能」の件がある。
天才的なピアノの才能を持ってはいるものの、親はその才能を知らないでいる。
なんとなく普通に大きくなって、普通にやっていけたらいい、と、そればかりを考えている。
ピアノを習うにはお金もかかる。ふうかは両親を慮って、普通の(ちょっと変わった)女の子のふりをして毎日を過ごしている、のだが。
そこに主人公たちが現れて、彼女の運命が変わる。
すべてがいいほうにまわり始める、まさに夢のような話。
甘すぎる、と思う人もいるかもしれない、と思う。
それでも小路さんの書く話はこれでいい。よんだあと、やわらかい気持ちになれる、数少ない作家さん。
そして今回の注目は「部長」!
かっこいい!
こういう大人を描けるのはすばらしい!
(80点)
阪神大震災が題材の一つになってます。苦手な方は避けたほうが無難。
![]() | 夢うつつ (2009/08/28) あさの あつこ 商品詳細を見る |
霧で視界が見えない中,異界を走るようにタクシーで帰宅の途に着いた。が,その運転手は死んだはずの幼馴染だった…。ごく普通の日常生活の一場面から,一転して現実と空想が交錯する物語が展開される,書き下ろし連作短編集。 (amazon・内容紹介より)
前半が、普通の日常生活のひと場面、後半がそれを元に作ったストーリーという、半分エッセイの連作です。
あさのあつこって妄想族なのね、ということがしみじみ解る本。
日常生活部分は本当に普通で。
友達とこんな馬鹿話をしたとか、子供がこんなことをしでかしたとか、そういう話。
しかしそこから繰り出される「小説」のパートは、切れ味のいい作品に仕上がっています。
作者のあとがきを楽しみに読む人は、この本、楽しいとおもいます。
特に面白かったのが、内容紹介にもあるタクシーの話。
霧・タクシー・幼馴染の三題話みたいになってます。
読んでてぞくっとする、切れ味のいい話。
(78点)
![]() | るり姉 (2009/04) 椰月 美智子 商品詳細を見る |
思春期を迎えた三姉妹と、その母。彼女たちの日常には、いつも母の妹の「るり姉」がいた。しかしある日るり姉が、入院することになり・・・。
この作家さんが好きなのです。
新刊が出たら読みたいのです。
でも、この本に関しては、内容知っていたら読まなかったかもしれません。
母の妹の通称「るり姉」が、ある日病魔に冒されて、入院生活を送ることになる第一章。
そこから視点を変え、時間をさかのぼりながら、「るり姉」と、主人公たちの家庭とのかかわりを書く作品です。
正直ね、この「だんだん過去になる」部分は、この作品に必要ではないと思うんですよね。
「生きる」こと、「死ぬ」こと、真正面から書ける作家さんなのに、技巧に走る必要はないなーと。
まっすぐ書いても、きっと面白かったと思います。
女ばっかりの家族のふれあい、きれいごとじゃない部分も込みで面白かった。イチゴ狩りの場面とか、るり姉の性格の書き方が秀逸。
ただもう…この設定が今の私にはきっつくて、読まなきゃよかった。
そういうコンディションのときって、ありますよね。
読後感が明るくて本当によかった。
(おすすめ度は高め。78点)
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