後何冊か、何日かかけてつらつらと、Upしていない本の感想を書いてしまって、今年は終わりにしたいと思います。
プラスマイナスゼロ (ポプラ文庫ピュアフル) (2010/11/05) 若竹 七海 商品詳細を見る |
ある時、センコーがアタシらを見てこう言った―「プラスとマイナスとゼロが歩いてら」。不運に愛される美しいお嬢様・テンコ、義理人情に厚い不良娘のユーリ、“歩く全国平均値”の異名をもつミサキの、超凸凹女子高生トリオが、毎度厄介な事件に巻き込まれ、海辺にあるおだやかな町・葉崎をかき乱す!学園内外で起こる物騒な事件と、三人娘の奇妙な友情をユーモアたっぷりに描いた、学園青春ミステリ。(「BOOK」データベースより)
「歩く平均値」の主人公を中心に、美人で成績もよくって育ちもいいけど運だけが壊滅的に悪いお嬢様と、義理人情に厚いヤンキー娘の三人を主軸にすえたミステリー。
さすが若竹七海! と思ったのがミステリ的手法をこれでもかこれでもかと手を変え品を変え使ってくること。それでいて読後感のいい連作ミステリになっていること。
こういう、ちょっとすっとぼけた人物を書かせたら上手いよね。この持ち味は他にはいないよ。
それでいて、ちゃんと人間として筋が通っているから読んでて楽しいんだよね。
明るくさくさくと読めるので、ちょっと時間が開いたときに読むのにいいかも。
こういうの好きです。
(80点)
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イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス) (2009/02) 若木 未生 商品詳細を見る |
音楽の神様・藤谷直希、超絶ギタリスト・高岡尚、正確無比なキーボード・坂本一至、女子大生ドラマー西条茜。4人で作ったバンド、テンブランク。しかし、彼らの中に小さな亀裂が入れられて・・・。
昨日の「スロウハイツ」で書いた「最近ようやく完結した昔から大好きだった物語」というのがこれです。
読んでいて、とても苦しくなる本です。
心の、ど真ん中に、重低音をぶつけられる感じがします。
他のシリーズも大好きなのですが、この作品はちょっと次元が違う気がします。
覆い隠さない、飾らない、ぎりぎり尖らせたエッジで、躊躇なく突っ込んでいくような。
作者が、魂を削って書いているような本。
大好きです。
この本に関してはもう、感想とか何とかいうのが難しい、とにかくもう全面的に「お帰りなさい」としか。
最終巻ですが、作中の彼らはまだどこかで鳴らし続けてくれているだろう気がします。
若木さん、書いてくれてありがとう。
私はこの本に出会えて幸せです。
(点数なんてつけられません)
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遺品 (角川ホラー文庫) (1999/12) 若竹 七海 商品詳細を見る |
金沢市郊外、銀鱗荘ホテルに眠っていた今は亡き女優・曾根繭子にまつわるコレクション。その公開作業が進められる中、明らかになったのは、コレクションを収集した大林一郎の繭子への異様なまでの執着。繭子の使った割り箸、繭子の下着、繭子の…狂気的な品々に誘われ、やがてホテルには、繭子が書き残した戯曲を実演するかのような奇怪な出来事が次々と起こる。それは確実に終幕に向かって―。書き下ろし本格長編ホラー。(「BOOK」データベースより)
ホラー文庫から出てるだけあって、ちょっと異色な作品。
今なら「ストーカー」と呼ばれるだろう、女優のパトロンの異常な所有欲がだんだんあらわになっていくあたりが読みどころか。すっごい気持ち悪いです。下着から髪の毛から何もかもコレクションして、整頓してとっておく執念。そして感応するように起こるいろいろな不可解な出来事。
主人公の学芸員が、若竹七海お得意の気丈で仕事にプライドを持っている、気の強い女性で、その気丈さが帰ってこの話ではあだになる感じ。
超常現象がらみの、ミステリ的な結末というか、「実は」という真相解明部分も、それまでの雰囲気が盛り上がっているから、すんなり受け入れられます。
(80点。結構好き)
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バベル島 (光文社文庫) (2008/01/10) 若竹 七海 商品詳細を見る |
将彦の勤めている会社は30階建てビルの25階にあるが、このビル、入居者がほとんどいなく、夜など人気がなくなってしまう。いつの間にか、「幽霊が出る」という噂が流れていた。将彦はある日、残業中の気晴らしもかねてエレベーターに乗り込もうとするが・・・。(『上下する地獄』より) 単行本未収録、初期短編集。全11話。
帯に、「幾種類もの『怖さ』がつまった」とあるんだけど、これ以上解説はいらないかな、とも思えます。
その怖さというのが、ホラー的な怖さとも一味違って、「人の悪意にぞっとする」という感じ。読了後、嫌ーな気分になります。最近、こういう種類のホラーもの、多いよね。実話系も含めて。
ラスト1ページでひっくり返してくれる話もいくつか入ってて、さすが、とうならせてくれます。
私が一番好きなのは、やっぱり表題作の「バベル島」かな。実を言うと先が読めたんだけど、それでもラストはゾクリとしたよ。こういうの大好き。
(80点)
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渡辺さんは、新刊が出るとなぜか読んでしまう作家さんの一人。普段の読書傾向とは一致してない気がするんだけど。
魔性 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2006-11 |
珠代は、二十九歳の元OL。親には内緒で仕事をやめ、半引きこもり状態で、OL時代の貯金を食いつぶす日々。その彼女が唯一積極的になるのが、仲間とJ2チームのトラヴィアータ川崎の応援をするときだけ。ところが、最も贔屓にしているFW、レオ様の誕生日に、一緒に弾幕をかけて応援しようとしていたありさが殺された。翌朝、ありさの名を騙ったメールが届く。犯人は、ひょっとして、サポーター仲間の中にいる・・・? 引きこもりから足を洗って、調査に乗り出す珠代だが・・・。
渡辺氏の書く物語は、「女性の再生」の物語が多い。夫の暴力・アルコール中毒・不倫など、原因はさまざまだけど、人間らしい生き方をしてない女性が、何らかの事件を経て、自分を取り戻す話。この本もそんな感じです。
サッカーに興味がないと、最初とっつきにくいかも知れませんが、読んでるうちにそれほど気にならなくなります。ルールについてはそれほど出てこないので問題ありません。Jリーグチームとサポーターの関係については、そんなもんなんだ、と飲み込んでしまうのが一番かと。
ミステリとしての読み応えは十分とはいえません。一人の女性の成長物語としても、満点はつけられない。乗り越える部分があっけなすぎる。しかし、それでも丹念に珠代の周りの人間の裏表を書き込む筆力にはため息が出ます。読んでて、飽きなかったもの。500ページもあるのに。
ところで、作中にミチルという女性が出てきます。珠代に、事件についても生き方についてもアドバイスしてくれて、毒舌で、美人で、美容店を経営していて。私、ラストの方できっと、彼女の人生についてだとか、過去の事件についてだとか、あるいは今回の事件とのかかわりだとか、何かこう、明かされるもんだと早合点して読み進めていったんですが、そんなことはなかった。・・・ちょっと残念。渡辺容子が描く典型的なやり手の女性だけに、何かあると思ったんだけど。
(それとも私が読み落としているストーリーで主役張ってたりするのかなあ)
そして、読み終えてようやくタイトルの意味に気付く。・・・そういうことだったのね。
(70点)
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