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「ルピナス探偵団の憂愁」 津原泰水
雑誌掲載のほうは読んでたんだけど、いまいちピンとこなかった。まとめて読んだら何か違うかな? と試してみたんですが。

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)
(2007/12)
津原 泰水

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高校時代「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた少女3人と少年1人。卒業後、それぞれの道を歩んでいた4人のうち、1人が不治の病で世を去った。久々に顔を合わせた3人に残されたのは、彼女が死を前にして百合の樹の林に造らせた、奇妙な小路の謎だった――。第1話「百合の木陰」から時を遡り、高校卒業式を目前に殺人が起きたルピナス学園で、彼らが授かった“祝福”を描く第4話「慈悲の花園」までを辿る。津原泰水だからこそ書き得た、少年少女たちの「探偵」物語。 (東京創元社書籍案内より)

これがまた、びっくりするくらいよかった!
雑誌と比べたわけじゃないんで、どのくらい加筆してるのか確かめていないんだけど、大まかなストーリーは変わってない。でも、なんか違うのですよ。

第一話冒頭で、主要人物の一人がいきなり死亡して、しかも彼女の生前の不思議な行動の謎を解く、ストーリーとしてはオーソドックスながらシリーズものとしてはありえない展開。そこから徐々に話がさかのぼって、ああ、こういう仕掛けなのね、と思いながら読んでたら。

最後の話、第4話、時系列的には最初の話、そのラストシーンから巻頭の話にぐぐっと引っ張られて。
ただでさえ、「卒業」という泣かせる場面なのに、ああ、こうつながってるのか、ちゃんとつながって生きているのか、と思うともう、ほろりとしたよ。

それぞれの話をただミステリとして読むと「まあまあ」程度なのだけど、その合間に見え隠れする死んでしまった彼女と、その友人たちの心のありようが実に・・・じつにこう、胸をつく感じなのです。
終わりが見えてるからこそ、描ける物語はあるのだと。

(85点! 満喫)

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「ブルー・スノウ・ワルツ」 豊島ミホ
ブルースノウ・ワルツブルースノウ・ワルツ
(2004/05/13)
豊島 ミホ

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「怪しすぎるよ。こんなところに『弟』がいるなんて嘘じゃないの?」父と二人、少女は教会の地下、苔むした石畳を歩んでいく。研究者の父と、社交に忙しい母、二人のメイドとともに館で何不自由なく暮らしていた彼女の前に、野生児の「弟」が出現した…。R‐18文学賞読者賞受賞作家の魅惑的なゴチック・ロマンス。 (「BOOK」データベースより)

田舎の山奥で発見された、人に育てられていない少年と、その子の観察をすることになったお屋敷のお嬢様。接点もなく、言葉さえ通じない(少年の方が言葉と言う概念を持っていない)中、徐々に心を通わせていく話。

すごく特別ではない。ストーリーも結末も予想できる。ここがいい、と明確に褒める場所もない。
豊島氏にはこういう静かなストーリーはむいてないんじゃないかな。もうひとつ驚きがほしかった気がする。

それに比べると、併録されている「グラジオラス」はいい。
いかにもページあわせ風の短編で、全然期待してなかったのだけど。
死んでしまった片想いの相手が忘れられず、毎日のように妄想にふける少女が主人公。
「追憶」、ではなく「妄想」。
これが実に、女の情念的な、小さくっても女は女よねー的な感じで、いいのです。

(トータルで73点。グラジオラスだけならもう5点)

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「花が咲く頃いた君と」 豊島ミホ
「東京・地震・たんぽぽ」が大変よかったんで、次に何を読もうか狙っていた作家さん。

花が咲く頃いた君と花が咲く頃いた君と
(2008/03/19)
豊島 ミホ

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ひまわりで遊び、コスモスに恋をし、椿に涙して、桜の微笑みに頬笑む-。目を閉じ、耳を澄ませば、可憐な花の囁きが聞こえる。日常の切ない一瞬を切り取る名手が、いま、分岐点にいる人に贈る珠玉の短編集。 (「MARC」データベースより)

まさに、短編集、です。
主人公はそれぞれ違うし、ストーリーのタイプも少しずつ違う、それでいて「何かが変わってしまう」ことへの不安、切なさ、そういうものが共通してる、トータルして統一感のある本。

中三の夏、タイプの違う友人と過ごす夏休み。終わってしまう中学生活の象徴のような季節。
秋に出会った、逃亡者。逃げている彼に共感を覚えたものの、彼はまた新しい土地へ逃げていく。
冬、深々と寒い時期、亡くなったおじいちゃん。じわじわと沸いてくる実感。
春、片想いの女性と空き地にひっそりと咲く桜を重ね合わせた少年の、恋の行方。

ちょうどこの年の人が読むよりも、もう少し大人になって、甘酸っぱく思い出すほうが似合う本だと思います。

(78点)

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「月蝕島の魔物」 田中芳樹
三部作、だそうです。この表紙、結構好きなので、某シリーズのようにならない事を切望します。

月蝕島の魔物 (ミステリーYA!)月蝕島の魔物 (ミステリーYA!)
(2007/07)
田中 芳樹

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クリミア戦争帰りのエドモンドは、姪のメープルと一緒に貸し本屋に勤めていた。業務の一環として、ディケンズとその家に滞在しているアンデルセンとの2人の世話をすることになった。これが冒険の始まりだった・・・。

作中に薀蓄がたくさん含まれている話には二種類あると思うのだけど、一つは「その薀蓄の語り口自体に魅力があって作品の骨子となっているもの」。もう一つは「作品中に必要だとは思うものの、それ以外の部分と調和しきっていないもの」。・・・正直言うと、この本は後者かな。「この部分はなくてもいいかなー」と思う部分がところどころにありました。
ただ、この本は事件の当事者が50年経って過去を思い出しながら語るという体裁なので、「年寄りの話は無駄が多くていかん」みたいで、嫌な文章ではなかったです。

ストーリーとしては完全巻き込まれ型の、「なんか気付いちゃったら冒険しなきゃならないことになってるんですけどー! 早く平穏な生活に戻りた〜い!!」っていう話。ちょっと頼りない年長者(でもやるときはすごいんです)と、しっかり物の年少者(でもちょっと無鉄砲)という組み合わせも、一つのことについては才能あふれるくせに実生活ではまったく役に立たない大人という人物も、田中氏お得意で、安心して読み進められました。
この本はやっぱりあれですよ、アンデルセンに好印象を抱けると断然面白いんじゃないかなあ。

(80点、冒険活劇として文句なし)
 

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「官能的」 鳥飼否宇
官能的――四つの狂気 (ミステリー・リーグ) (ミステリー・リーグ)官能的――四つの狂気 (ミステリー・リーグ)
(2008/01/24)
鳥飼否宇

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変態助教授・増田米尊のフィールドワーク中、ターゲットの女性が公園のトイレで惨殺される。「唯一の」目撃者・増田の話が事実とすれば、彼以外に犯人はいなくなるのだが…?  4つの事件に、変態数学者が超絶思考で挑む。 (「MARC」データベースより)

バカミスです。
興奮すると頭脳がさえるという変態教授が、ストーカー行為の末事件に巻き込まれ、それを自力で何とか解決する話。
よくもまあ、こんな設定を思いついたよ、というミステリです。

・・・結構好きなんです。

まあ、設定がおかしいので事件もひねくれて見えますが、つくりとしては王道です。
最終章で、一応解決してきたかのように見えるそれまでの事件が、有機的に結びついて新しく解決を見せるところはさすが。
これが伏線だったのか! という驚きも十分。

あ、主人公は一応「変態」教授ですので、成人で、いろんなバカを笑って許せる度量の持ち主の方が読まれるといいんじゃないかと思います。

(75点。バカミスを許せる人なら絶対面白い)

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