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「ホテルジューシー」 坂木司
「シンデレラ・ティース」の姉妹編です。

ホテルジューシーホテルジューシー
(2007/09)
坂木 司

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大家族の長女として育った浩美は、大学最後の夏休みをアルバイトをして過ごそうと、沖縄に行った。ところが勤め先のホテルのオーナーは不在、オーナー代理はいい加減、生真面目な浩美にとっては神経が磨り減るような毎日だったが・・・。

「頼りになるおねえちゃんねー」「やっぱり浩美がいると助かるわー」なんて事を刷り込まれながら育って、真面目一辺倒になってしまった女の子が、万事緩やかな地方で悪戦苦闘する話。「日常の謎」系というほどミステリ色は強くなく、ちょっとした揉め事の種、のような感じです。
そしてこのオーナー代理がいい味出してます。自分の正義感に振り回されて暴走しがちな浩美を、さりげないアドバイスといい加減に見える行動でフォローして、大きな事件に巻き込まれないよう守ってくれる役。そしてそれを当然ながら浩美は全然気付かない。べたべたなラブコメの基本、押さえてます。

真面目なのは悪いことじゃないけど、世の中すべてが「正しいこと」だけでまわってるわけじゃないし、自分にとって正しいことが相手にとってもそうだとは限らない、という事を、ひと夏のバイト生活で学んだ浩美。
多分、この後も浩美はこのホテルに働きに行くんだろうなあ、という気がします。

(80点。坂木さんはもともとそれほど「濃い」作品を書く人じゃないのでこれでよし)

カテゴリ:坂木司
テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌
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「先生と僕」 坂木司
この本は表紙がいいです。「引きこもり三部作」もよかったけど、こっちの方が気に入りました。

先生と僕先生と僕
(2007/12)
坂木 司

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怖がりの大学生、二葉は、ミステリ大好き中学生の隼人の家庭教師を演じることになった。が、この隼人、「家庭教師は必要ない」というだけあって、頭の回転も速く、さまざまな事件を発見して推理するのも楽しんでいて・・。


坂木さんらしい作品です。

冒頭に「引きこもり三部作」をひいたんですけど、そこはかとなく同じ香りがします。基本的に底抜けにいい人の主人公と、頭の回転の速い探偵役。
ただ、こっちの方がずっと健全ですね。
お互いに思いやる気持ちはあっても、もたれあう気持ちはないから、かな。

探偵役の隼人は、頭の回転も速いし、推理力もあるし、でも少し歪んでる部分があって、そこが坂木さんの味になっているのだけど、臭みを感じる人はいるかも。
二葉の人のよさにしても、怖がりにしても、やりすぎっぽいところはあるし。

それらを差し引いても、「推理もの」としていいの作品だと思います。
一話ずつゆっくり読むのもお勧めです。

(78点)

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ワーキング・ホリデー 坂木司

坂木司氏の新シリーズ(希望)。新しい出版社だからか、イメージはだいぶ違います。

ワーキング・ホリデー ワーキング・ホリデー
価格:¥ 1,550(税込)
発売日:2007-06

主人公ヤマトは元ヤン。ちょっとだけいいみかけを利用して、ホストにもぐりこんでいるが、成績はさんざん。そこへ、見知らぬ小学生の「息子」を名乗る進がやって来た。名前を聞くと、心当たりがあるような・・・? 行きがかり上、進の面倒をひと夏見ることになったヤマトは、宅配便ドライバーに転職するが・・・。

坂木さん、上手くなったなあ。

引きこもり探偵のときのようなどこか病んだ感じもなく、シンデレラ・ティースのようなできすぎ感もなく、すうっとストーリーに入っていける。あえて言うならあれですか、最初のところで進の言い分全面信用しちゃってますけど、ここは大人として裏取らなきゃならないところじゃないのかな。進が嫌がっても。坂木氏の作品には、どこかそういう詰めの甘いところがあって、それは多分「根っこから悪い人間はそうはいない」って信用から出てきてるものだと思うのだけど、鼻につく人はつくだろうと思います。

ヤマトのところどころ古風な筋の通し方なんかが私のうんと好きなところ。「車道飛び出し」のときの理屈なんか、見習いたいくらいです。

ミステリ色はずっと薄くなってるんで、物足りない感じもあるけど、無理に謎を「こしらえて」出されるよりはずっといい。ストーリーだけで読者引っ張っていけるんだから。

シリーズ化とはどこにも書いてないんですが、続きが出たら絶対読む。

(85点)

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動物園の鳥 坂木司
動物園の鳥 動物園の鳥
価格:¥ 630(税込)
発売日:2006-10-11

創元推理文庫

前回の投稿を読み直してみて、ちょっと攻撃的過ぎたなあ、と反省。この本を併読してたから余計物足りなかったのかも。

引きこもり探偵シリーズ第3弾(完結編)。初の長編です。

今回はネタばれあり! かも。

本当に引きこもりといっていいのか? と思うほど行動半径が広がった探偵役の鳥井くんは、今度は動物園まで出かけていきます。動物園で不自然な怪我をしているノラ猫がたくさんいる、犯人が誰かつきとめて欲しい、というお願いを受けて。 

ちょっと不思議なのだけど、自家用車で移動、というのは首都圏の人にとって非常識なのかしら。駐車場の問題とか? そもそも免許を取らないのかな。これだけ鳥井くんにつくしている坂木くんなら、彼の行動半径を広げる為なら車くらい用意しそうな気が。そしたら移動時間中のストレスがぐんと減るだろう、というのはやはり一家に車2台が当たり前な地方に住んでる人間の思い込み、ですかね。

話は戻って、出かけていった先の動物園で、坂木くんは学生時代に鳥井くんをいじめていた青年と再会します。彼が鳥井くんが引きこもりになる原因を作った人物です。当然、坂木くんも彼には好印象を抱いていません。ところが、どうやら彼はこの動物園に関係のある職業についていて、ノラ猫虐待についても何か知ってるようで…。

ここからがこのシリーズの白眉だと思うんだけど、(というか坂木氏の作品の、かな)探偵役の鳥井くんは、犯人を指摘するところで終わらない。なぜ、そんなことをして“しまったのか”まで言及する。周囲の心優しい人たちも、その原因を取り除くよう協力する。心の問題な部分も多くあって、自覚した時点で解決の一歩目、ということもあるけれど。

しかも今回は、頼まれても巻き込まれてもいないのに、他の人物の歪んだ部分も指摘して、解決してしまう。すごい。少なくとも、かかわりを持った人物と、関係を深めていくことに嫌悪感がなくなったようにおもう。

今はまだ、坂木くんという杖がなければ外出も出来ない鳥井くんが、そのほかの人(滝本くんとか、栄三郎さんとか)と出かけられる日がくるのかもしれない。共依存している主人公二人がこのままの状態でいられないと自覚した作品でもあったのかも。一足飛びに何もかもはよくならないけど、いいほうに変化し続けている。

最後におまけ。お取り寄せの出来る銘菓に、北海道のものが複数出てますが、帯広出身のうちのダンナいわく、六花亭は板チョコよりマルセイバターサンドのほうがおすすめだそうです。板チョコはホワイトが定番です。六花のつゆはおいしいけど郵送すると破損することが多いのでおすすめしません。以上、地方出身者の一言でした。

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シンデレラ・ティース 坂木司
シンデレラ・ティース シンデレラ・ティース
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2006-09-21

光文社

坂木司さんの最新作。9月発売の本だから、私にしてはえらく早く読んでます。

めちゃめちゃ歯医者嫌いなのに、親の陰謀で歯医者の受付バイトをすることになった主人公が、不思議な行動を取る患者さんたちと出会って、その行動の理由を考えたり、同僚に教えてもらったり、人生経験をつんでいく話。

正直に感想を言うと…、普通。

(いま、すごく心苦しい。こんな言い方しか出来んものか)

すごく、安定している作品。今までのような壊れた人物は出てこないし、主人公の世界を見る目はまっすぐだし、登場人物はみんな優しくて温かいし、謎が解けて世界が裏返る瞬間は劇的ではないにせよ印象的だし、こっそり入っている歯医者トリビア的なものも自然で違和感ないし、ここが欠点、というところはない、ん、だけど。

初期の引きこもり3部作に比べると、なんというか、「熱」のようなものが感じられない、というか。

んもう、私はこれが書きたくて書かずにいられないのよッ!! みたいな感じがしない。面白いは面白いんだけど。私ならこれは高得点はつけないな。

で、もう一個疑問。こんなにゆとりのある治療をしていて、スタッフもたくさんいる歯医者さんなのに、なんかずいぶんお金に余裕がありませんか。歯医者さんってそんなに儲けられるものなんですか。 

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