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乱読にもほどがあるッ!
趣味? 読書です。毎日欠かさず本を読む、グータラ主婦の読書記録。
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なんか新刊でてるなあ、と思ったら「古典部」だし! コレを読み落としていたとは、不覚なり。

ふたりの距離の概算ふたりの距離の概算
(2010/06/26)
米澤 穂信

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春を迎え、奉太郎たち古典部に新入生・大日向友子が仮入部することに。だが彼女は本入部直前、急に辞めると告げてきた。入部締切日のマラソン大会で、奉太郎は長距離を走りながら新入生の心変わりの真相を推理する! (amazon・内容紹介より)


今回の話はマラソン大会が舞台です。
二年生になった奉太郎たち古典部と、仮入部してきた1年生。仲良くやっていたと思ったのに、急に入部しないと言い出されたため、原因を探るべく奉太郎が過去を回想します。

ああ、奉太郎変わったな、というのが第一の感想。
「やらなくてもいいことはやらない、やらなくてはならないことは手短に」といっていた頃から一年。以前の奉太郎なら、新入部員を獲得しなくてはならない理由があるわけでなし「入部しないというのなら何か理由があるんだろう」と流してしまっておかしくなかったのに、入部しない理由を考え込んでしまうあたり、誰かの影響が大きいなーとニヤニヤしました。実際、入部取り消しによって一番傷ついたのは千反田えるだろうし。

今回の話も前回同様、物語が終わる時点というのは決まっていて、「マラソン大会の終了時」がそれです。それまでにいろいろ思い起こして推理をまとめなくてはならない、この制限たっぷりな中で奉太郎の回想がまた無駄がないのです。推理の要素がぎっしり詰め込まれていて、それでいてちゃんと青春小説で楽しく読み進められて、謎解きでは「あれとあれがこうなるのか!」って驚きもたっぷりで、文句なし。ちいさな場面も読みおとせないですよ。これぞ日常の謎、という話です。すごく高度な技を、そう感じさせないくらい鮮やかに見せてもらった話というか。

学年が進むことで人間関係にも変化が生まれてくるのは当たり前なのだけど、古典部の面々も少しづつ成長してますね。
奉太郎が実にいい男に育ちつつあります。素敵。
ちゃんと、物語内の時間を進めて成長を実感させてくれることに、感謝します。

(90点)
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なぜかこのシリーズを一気に読み返しておりました。

氷菓 (角川スニーカー文庫)氷菓 (角川スニーカー文庫)
(2001/10)
米澤 穂信

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いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。 (「BOOK」データベースより)

さよなら妖精」にも通じる、好奇心旺盛な女の子に振り回される男の子の話。

やらなくてもいいことならやらない、やらなくてはならないことなら手短に、という主義の奉太郎。どこにでもいる、目立たない男の子だったはずが、実は「推理力」という天性の才能に恵まれてて・・・。
彼が、姉の命令でしぶしぶ入った部活、古典部。
同じく一年生の部長、千反田えるの「私、気になります」という言葉が出るたびに、彼女が気にする謎を解いてあげることになるんですが・・・。ここで断固として拒否することも出来るのに、なんだかんだ押し付けられてしまう奉太郎の人のよさ、好きです。

そして、この本のタイトル、「氷菓」。
これは古典部の代々伝わる文集のタイトルなんですが、実はここにこの作品一番のなぞが隠されています。
この謎を解いた後の、えるの台詞が、非常に印象的で、あれだけで私の評価はだいぶ上がりました。

ちょっとひねった青春小説です。
読後感はちょっと切ないかな。
私はこの本を読んでから、米澤氏の本を追いかけるようになりました。

(84点)



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二ヶ月連続刊行というから、てっきり先月に続いて月末発行だとばかり思ってました。11日発売でした。油断したなあ。

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
(2009/03/05)
米澤 穂信

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ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ―。(「BOOK」データベースより)

(上)の方の感想もあわせて読んでいただけるとうれしいです。

はい、やられました。
これが楽しいのです。

ネタわれしないで書くのが非常に難しい作品なんですが、主な謎は「連続放火事件」。だんだんエスカレートしていく放火の様子に、何とか被害者を出す前に捕まえよう・・・というのが普通の人の考えそうなことだと思いますが、この事件をネタに今まで見向きもされなかった校内新聞を作り変えようという少年がいて、彼がストーリーを引っ張っていく形になります。良くも悪くも。
そしてその少年の影に見え隠れするのが小佐内さん。

果たして誰が犯人か? というのと平行して、誰が犯人を捕まえるのか? といった興味も引くつくりになってます。

そして米澤氏のすばらしい! と思うのが、なんとなく読んでいるだけだと「こっちに話が進むのかな」と思わされてしまうところ。
ラストであれよあれよと印象がひっくり返ります。すばらしいどんでん返しなんんかじゃないけれど、なるほど、と思わせてくれるのはさすがです。いろいろわかった上で、再読したら、きっと印象がぜんぜん違う。そういう細かい技巧が利いてる作品。

そして。
実はこっちがメインなんじゃないかと思うのですが。
小市民を目指すからこそ小市民ではありえない小鳩君の心境の変化がもう、恥ずかしいようなうらやましいような甘酸っぱい感じで。
小佐内さんとのあれこれも含めて、ほほえましく読みました。

シリーズ3作目にして、一番好きな作品になりました。
(85点!)

近い将来やってくる、最終巻(と、小鳩君たちの卒業)が、待ち遠しいようなもったいないのでゆっくり来てほしいような。


ちなみに米澤氏の作品で一番すきなのは・・・いまだに、「氷菓」なのでした。



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はい、ようやく入手しました。2月のまとめで愚痴っていたのはこの本です。

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
(2009/02)
米澤 穂信

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あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。―それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい…。 (「BOOK」データベースより)

類まれな推理力があだになって、苦い体験をした小鳩くん。小市民の皮をかぶって、彼女との日常を楽しんでいるふりをしつつ、やっぱり推理はやめられない彼。この、「楽しんでいるふりをしている」自覚があるのが小鳩君のダークなところです。小市民になれてないですから。
そして、前作まで彼と互助関係にあったものの、今は離れてしまった小山内さん。彼女の「カレシ」の新聞部員が、学内新聞に書くために連続放火犯を追う。
関係のない道を歩いているようで、お互いに横目で観察しあうような距離感が面白かった。

なんだかんだ言いつつ、性癖は変わらないんだなあ、と思いつつ読みました。
作品としての評価は、下巻を読んでからにしたいと思います。

(80点)



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結構早く借りられました。今月末には「秋期限定~」の新刊も出るらしい米澤氏、今回はブラックな方の作品です。

儚い羊たちの祝宴儚い羊たちの祝宴
(2008/11)
米澤 穂信

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母が死に、妾の子として父親の家に身を寄せることになったあまり。彼女に課せられた仕事は、北の別館の管理と、そこに閉じ込められている長男・早太郎の世話だった。早太郎に命ぜられるままに奇妙な買い物を繰り返すあまりだったが・・・。 (「北の館の罪人」あらすじ)


最後の一ページでそれまで気づいてきた物語世界がひっくり返る作品というのは多いけれど、今回収録されている作品はもっと厳しく、最後の一行に衝撃を凝縮したもの。
普通のミステリかと思って読むと、終盤ひっくり返されて、その上最後の一行でガツンとやられる。面白い。

ただし、より印象的なのはむしろ時代感というか雰囲気というか・・・。

全部で5つの短編が収録されていますが、共通する登場人物はいません。
共通点は、「バベルの会」という読書クラブに所属している(いた)人たち、ということ。しかしこのバベルの会についても、詳しい説明はありません。

むしろ共通しているのは、退廃的な、薄暮の中を漂っているような現実感の薄さ。ちょっと昔に設定してある時代背景がさらにそれを際立たせます。自分の中の暗いふちを覗き込みながら生きてきたような人たち。彼らが巻き込まれた、おこしてしまった犯罪。
なんとも、鬱々としてしまうような閉塞感があります。が、それがまた楽しかったり。

印象的だったのは、表題作「儚い羊たちの祝宴」。
作中作として書かれている日記は、展開が読めたのだけど・・・そのあと一章付け加えることで、まったく物語の印象が変わりました。すごい。

(80点。 面白いんだけど読者は選ぶような・・・)



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