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![]() | 月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫) (2000/10) 上橋 菜穂子 商品詳細を見る |
朝廷から稲作を進めるよう厳命されたムラ。田に適した土地といえば森との間にある沼だが、そこにはカミがおわしまして、下手に触れると祟られると言い伝えられている。カミを鎮めるべくやってきたナガタチだったが、カミの妻・カミンマの少女にこの土地の歴史を聞き・・・。
古代日本風ファンタジー、です。
中央集権を進める朝廷に迫られ、それまでの生活を捨てさせられた人たちの話。カミというのが、実際に肌で感じられていた頃の話。
前半部分が過去の回想なこともあってか、少し展開がゆっくりですが、後半は一気。ちょっと荒削りな感じもしますが、それは先に「守人」シリーズを読んじゃったからかもしれません。
(72点。荻原規子氏の「勾玉」シリーズが好きな人とかがいけると思う)
![]() | 獣の奏者 I 闘蛇編 (2006/11/21) 上橋 菜穂子 商品詳細を見る |
人が乗れるほど大きな蛇、闘蛇。戦闘用のその獣を飼育する闘蛇衆の一人を母に持って育ったエリン。ある日、闘蛇が何頭も死亡し、その責任をとる形で母が処刑されることになる。エリンは母を助け出そうとするが、母は逆に指笛を用いてエリンを処刑場から逃れさせた・・・。
振り仮名が多いので、この本は多分「児童書」なんだろうと思うのだけど(図書館でも本屋でも児童書コーナーにおいてあるし)、内容的にはそんなカテゴリでくくって、大人が読まないなんて馬鹿らしい、と思わせてくれます。
闘蛇と、その天敵の羽を持つ獣、王獣。決して人に馴れず、また、馴らせてはいけないといわれている獣。
その獣を指笛で扱い、それを「大罪」と呼んだ母。
母の力で生き延びたものの、家族も住む家も失い、養蜂家の男性に拾われたエリン。彼女の知識欲は、彼女をもっと大きな世界へ連れて行くが、それは安穏とした世界からの別れを意味している。
ファンタジーにも色々ありますが、この方の書く世界は、決して「魔法の世界」ではありません。異世界民話、というのが一番雰囲気を伝える言葉かな。決しておとぎ話ではない。
人間よりも大きな力を持つ生き物たちを捕らえて使役してきた国家が、それを維持していく為の力を失って、軋みをあげている。そこに現れた、既存の概念を打ち破る少女。彼女の存在が、国のあり方を変えていく話。
もっと突っ込んで書けるところもあるよなあ、と思ってみたり、でもそこを書いてしまうと対象年齢が変わってしまうのかなあ、とも思ってみたりします。
でもラストの場面は、一見きれいに全部解決したようでいて、問題山積みなのですよ。もうちょっと読みたかったなあ・・・。
(83点。なんとなく今日は歯切れが悪いなあ・・・)
ここから、いつもの読書感想に戻ります。
「守人シリーズ」最終章。精霊の守人は感想書いてましたが、後のはスルーでした。まとめて行きます。
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天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド) 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2006-11 |
タルシュ王国からの侵略を避けるため、鎖国をした新ヨゴ王国。帰れなくなった人々を助けて国境越えの警備をするバルサ。そこへ、チャグムが行方不明だという知らせが届く。チャグムを探しに旅に出たバルサだが、一方、異世界からの影響で小さな災害が群発していて・・・。
精霊の守人で「面白いけどもう一味読み足りない」と思い、闇の守人で「チャグムが出てこないのは残念だけど、前作より一段凄みを増してる」と思い、夢の守人で「やられた」。まず何より、世界観。たくさんの国が出てくるのに、揺らがない、ワンパターンにならない。各国で起こる出来事が、風習としっかり結びついている。その辺にいくらでも落ちている「似非ファンタジー」とは一味違う。
そして、「虚空の旅人」。今度はチャグムが主人公。一作目のファンの求める部分を、しっかりわかってらっしゃる。バルサもかっこいいけど、チャグムのその後も気になってたのよ、うんうん。
神の守人を読んで、「やっぱりこの人はこのくらい長い話がいい、しっかり書ききってる」と思い、そして最終章。3冊。厚い。
長かった。でも、だれている部分はなかった。
よその国から攻められる恐怖。そして軍事力では決して勝てない焦り。それとは違う次元での民の暮らし。人知を超えた災害。親と子の確執、出世欲で目が曇っている権力者たち、ひとつひとつのエピソードが絡み合って濁流のようになだれ込むラスト。
ここに落ち着くために書かれたような10冊。
それでいて、「児童書」なのです。陰惨な場面はある。いのちを踏みにじられる場面もある。失われるものもある。すべてのみこんで、希望のあるラストシーン。上手い。
今日の感想はどうにも上から目線だわー。何故だろう・・・。
(80点。文庫になって入手しやすくなりつつあるんで、ぜひ読んでください)
〈守人シリーズ〉が有名な作家さん。児童向けのファンタジーを主に書いていらっしゃるようなんですが、今回は日本風。
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狐笛のかなた 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2003-11 |
怪我をした子狐を拾った小夜は、猟犬に追われて普段近づかない屋敷の方へ逃げていった。そこには同い年の少年、小春丸がいて小夜を助けてくれる。これをきっかけに、大人たちには内緒で仲良くなる二人。二人を物陰から見つめる子狐は、実は獣ではなく霊孤だった・・・。時はすぎ、小夜は十六歳になっていた。保護してくれていた祖母も亡くなり、一人で生活していたが、ある日の市で昔の自分を知っているらしい女性とその兄に出会う。そこから、小夜の運命が動き出した・・・。
日本風なのだけど、日本ではない。守人シリーズのときも思ったけど、世界を作り上げることとそれを過不足なく描写するのはさすがの一言。特別な用語もちらほら出てくるんだけど、解りにくいことは一度もなかった。底の浅いエセファンタジーをかいてる人に、「やるならここまでやらんかい!」といって読ませてあげたいくらいの作品。
実を言うと、小夜と小春丸の身分違いの恋愛がテーマになるのかな〜、べただけどそれもありだよな〜、なんて邪推しながら読み進めたのだけど、違いました。(いや、べた度で言うと同じくらいな展開ですが)恋愛を超えて、「お互いを大切に思う気持ち」がテーマ。どろどろしない、読後感のよさがいいです。
(80点)
本編とはまったく関係ないんですが、割とシリアスな場面で、「もんどりうって転ぶ」というのを読んだ途端にふきだす私。恐るべし森見登美彦。
| 精霊の守り人 価格:¥ 580(税込) 発売日:2007-03 |
新潮文庫
女用心棒バルサは、川に落ちた皇太子チャグムを助けたことが縁で、母親からチャグムを託されることに。体の中に「この世のものならぬ何か」を宿したチャグムは、父帝の差し向けてくる刺客に命を狙われていた。夏至までに「何か」の正体を見極め、何らかの手を打たないと、チャグムも、バルサも、命を落としてしまう。間に合うのか?
解説の恩田陸氏が書いているんですが、「日本の異世界ファンタジーは、児童文学、ゲーム、漫画、ライトノベルなどに細分化され、よほどのヒットにならないと一般の読者までその面白さが伝わってこないのが現状だ」と言うのには全面的に賛成。今はクロスメディア化も盛んで、ゲームから漫画へとか、小説からアニメへとか言うこともありますが、まあ対象になっている年齢層はさほど変化しないですよね。成人が児童書の名作をチェックするのって難しい。この本も、「面白い」と言う評価は聞いていたんだけど、文庫にならなかったら読まなかったかもしれない。
で、読んだ感想はというと。
きっちり作り上げた世界観、創国の伝承は見事。難解にならず、でも隙がなく仕上げてある。キャラクターの存在感、個性もいい。そして何より、スピード感。アクションシーンが、脳裏に浮かぶ。
いい。面白い。
でも。ここで大人の読者としては、物足りなさも感じてしまうのです。もう少し、ボリュームが欲しい。もっと色々な場面を読みたい。この要求を満たそうと思ったら、続編が出てるんでそっちを読んでもいいんだけど。
いやもう、正直に言っちゃうとね、「十二国記」(小野不由美)を初めて読んだときの衝撃にはかなわないなあ、と思っちゃうんですよ。この本がどうしていままで子供向けって扱いを受けてたの? って感じがない。
ん〜…。面白いし、お勧めも出来るけど、絶賛は出来ないかな。
(今月から点数つけることにしました・70点)








