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「一瞬の風になれ」 佐藤多佳子
面白くない、わけがない。

一瞬の風になれ(全3巻セット)一瞬の風になれ(全3巻セット)
(2007/06)
佐藤 多佳子

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主人公の新二は、天才的なサッカープレイヤーの兄の背を追いかけ、サッカーをやってきたが、「自分にサッカーの素質はない」と見極める能力には恵まれていた。高校入学に当たって、選んだのは近所の公立高校。同じ高校に通うことになった、幼馴染の天才スプリンターとともに、陸上部に入る。目標はただ、速くなること・・・。

三分冊で、結構ボリュームはあるのに、それを感じさせない軽妙な語り口がたまらない本。

メインの種目は「400メートルリレー」。100メートルずつ、4人の選手でバトンをつなぐ競技。
個々人の素質はもちろんだけど、バトンをつなぐタイミングなど、「チーム」としてのまとまりも要求される、難しい競技。

新二は、陸上でも「天才」と呼ばれるほどの才能は、ない。
あがり症だし、周りは見えてないし、自分の才能がどの程度なのかを見際める目も、最初はない。
それでも、天性の関節の丈夫さや練習をする才能などには恵まれていて、どんどん走る楽しさに目覚め、タイムも縮めていく。

そしてよかったのが、主人公だけの話に終わらないところ。
「俺が走るよりあいつが走った方が、次はともかくその次の大会で勝てる確率が高くなる」といって自らメンバーを降りる決意をするチームメイト。
チーム内でも際立って遅いのに、もくもくと練習に励み、「少しずつでも早くなってるのがうれしい」といって笑う女生徒。
0.1秒の差で上の大会に進めない、悲しみとあきらめ。
3年、部活を続けることによって、そういったいろいろな人たちの思いを背負っていることを自覚し、「次へつなぐ」ために走る主人公たち。
才能のあるなしが数字で現れる、シビアな競技。それでも、「一緒に汗を流した」時間は尊く、走る仲間たちに声援を送りたくなる。
ちゃんと、この物語のどこも無駄にならずに、最終巻の山場へとつながっていく。ただ、走る。少しでも早くなるために。


どう言葉を尽くしても、この本の面白さは言い尽くせないと思う。
ぜひぜひ読んでみて。面白いから。

(95点)

カテゴリ:佐藤多佳子
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「神様がくれた指」 佐藤多佳子
佐藤多佳子氏の読了本三作目。やっぱり上手いなあ。

神様がくれた指 (新潮文庫)神様がくれた指 (新潮文庫)
(2004/08)
佐藤 多佳子

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すりでつかまって出所したばかりの牧夫。隣家は家族同様にしてくれるんだけど、どうしてもその家には帰りたくない。そんな牧夫の前で、学生たちが集団で見事な手さばきのすりを見せ、追いかけた牧夫は利き腕に怪我を負ってしまう。
そんな牧夫を助けた昼間。女性のような外観で、「神秘の占い師」として人気があるが、酒とギャンブルにのめりこんで、アパートを追い出される寸前。
この2人が出合って、共同生活をはじめることになって・・・。


すりの話なんだけど、「青春小説」なんだよね。
すりと言うのは犯罪で、すられた人の事を考えたら共感してはいけないのだけど、読んでるうちにどんどん牧夫の「仕事」が上手くいくといいなあ、と思うようになる。応援したくなる。
実際、「子供たちがやってる、組織的なすり」の実態にも興味をそそられるし。

対する昼間は、普通の占い師で。
女性らしい外観を生かして、性別不詳の占い師として売ってるけど、曲がったことが嫌いで。相手をいい気分にさせるために表現を曖昧にすることはあるけれど。

この2人が、「集団すり」に違う方向から接触して、どんどん中心部に迫っていく。

いつ気付くか、知ったらどうなるのか、ぐいぐい引っ張られる感じ。結構長いストーリーなんだけど、一気にいけます。(いけちゃった。時間かけて読もうと思ってたのに)

これは読んで損はないよ?

(87点)

カテゴリ:佐藤多佳子
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「黄色い目の魚」 佐藤多佳子
結構たまってた積読もこれで一応の解消です・・・。あとは、「単行本を図書館から借りて読んでたのが文庫になったんで買いました」って本と、『ドグラ・マグラ』くらい。『ドグラ・マグラ』は何回チャレンジしても途中で萎えちゃうんだよね。

黄色い目の魚 (新潮文庫)黄色い目の魚 (新潮文庫)
(2005/10)
佐藤 多佳子

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海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて―。 16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。(「BOOK」データベースより)

失礼しました。私が悪かった。
実を言うと、この本買ったの結構前で、最初の2章だけ読んで、「絶賛されてるらしいけど、それほどでもないなあ・・・」と思って読むのをやめてたんでした。(貸し出し期限のある図書館本のほうが優先される傾向にあり)
しかし、この本の面白いのは3章に入ってから、なのでした。
第一章が、別居している父親を通して「絵」と出会う小学生の悟の話。第二章が、イラストレーターの叔父を持つみのりが、いじめと友人関係のあれこれで悩む話。
第三章になって、2人が同じクラスになってから、話が動き出すんです。

「絵を描く」という、誰にでも出来るのに才能の有無がはっきり傍目で解るもの。
取り付かれたように絵を描き続ける悟と、「自分に描く才能はないけれど絵の近くで生きていきたい」と切望するみのり。安易に恋とはいいがたい、強い感情。たった一人に出会ってしまった、苦しみと喜び。
まさに「青春小説」って感じです。16歳、高校生の頃の、不安定で一生懸命でときどきむしょうに走り出したくなるような強い衝動を抱えてる感じ、よく出てます。
これは確かに大傑作。読み返しても味が濃くなる、いい作品です。自分の見る目の無さにがっくり。
(88点!)

カテゴリ:佐藤多佳子
テーマ:感想 - ジャンル:本・雑誌
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サマータイム/九月の雨 佐藤多佳子

2冊合わせて『四季のピアニストたち』ということなので、感想は一度に行きます。

サマータイム サマータイム
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:1993-05

ピアニストを目指していたが、事故で左腕をなくし、断念せざるを得なくなった少年、広一。広一とプールで知り合ったことがきっかけでピアノを習い始めた進。進の姉の佳奈。それぞれを主人公に、季節に合わせた曲をBGMに綴られる話たち。

ヤングアダルトの小説。それぞれの話は長くないし、難しくない。

けれど甘くないし、「泣かせ」でもない。それぞれの淡い初恋や親への反抗心、ちょっと共感できて、しみじみする本。

(78点。今調べたら2冊まとめて文庫で出てるらしいです。文庫の表紙もいいけど、こっちのほうがイラスト的に好き)

カテゴリ:佐藤多佳子
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しゃべれどもしゃべれども 佐藤多佳子
しゃべれどもしゃべれども しゃべれどもしゃべれども
価格:¥ 620(税込)
発売日:2000-05

若い落語家の三つ葉は、吃音癖が原因で仕事に躓いた従兄弟の良に、「話しかた」を教えるように頼まれる。無愛想な美女の十河、関西弁が原因でいじめられている小学生の村林が参加することになり、簡単な落語を教えるのなら、と条件付ではじめたものの、参加者たちはみんな口下手で、仲良くなる雰囲気もない。自分の芸にも自信がもてない三つ葉、さて上手くいくのでしょうか?

と、要約してみたものの、何かがちがう。

まず、三つ葉。古典落語をこよなく愛し、普段から和服でとおす彼。すぐかっとなり手が出る。よく考える前に言葉が出てしまい、無駄なトラブルの元になったりする。が、恋事には奥手で好きな女性に告白すら出来ない。このキャラクターが実にいい。いざ高座にあがると緊張のあまりしどろもどろになる、そのじたばたしてもどうしようもない感じに素直に感情移入できる。そして、小学生の村林。関西弁の響きのせいで能天気な発言馬鹿利しているように聞こえるけど、彼の抱えるトラブルがいいアクセントになって話を引き締めてる。所詮子供の揉め事だ、なんて突き放してしまってはこの話は楽しめない。十河の不器用でぶっきらぼうなところもいい。

こういう、奇抜ではないながらも味のある人物たちが、一年かけてわずかずつでも成長していく話。はらはらはするけれど、ラストは大団円で、すっきりとした読み心地。

実は、漫画化作品を先に読んだ。追っかけて小説を読んで、こっちの方が好きになった。で、夏には映画にもなるらしい。丁寧に作ってもらえるといいな、と思う。鑑賞後、心がほっこりする作品になりますように。

(80点)

カテゴリ:佐藤多佳子
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