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「行きつ戻りつ」 乃南アサ
発作的に「普通の人の出てくる短編が読みたい!」と思って手に取った本です。

行きつ戻りつ (新潮文庫)行きつ戻りつ (新潮文庫)
(2002/11)
乃南 アサ

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受験を目前にした大切な時期だというのに、息子が家出、福井で保護された――とるものもとりあえず駆けつけた「私」に、息子は何も話さない。駅へ向かうタクシーの中、「私」は一生懸命息子に話しかけるが・・・。(『越前海岸』より) 


北は北海道から南は九州まで、実際に取材して作者の撮った写真を交えて書かれた短編集。
主人公は、40歳前後の普通の主婦たち。子供がいたり、嫁姑の関係に疲れてたり、昔の恋が忘れられなかったり、・・・特別劇的な事件があるわけでもない、どこの家にもおこり得る問題を抱えた主婦が旅先で出会った出来事たちが、書かれています。

うまいなあ。
平凡だけど陳腐ではないストーリー。飽きさせず、最後まで持っていく筆力。
私は平凡なんで、ありきたりな表現になってしまうんだけど、「ああ・・こういうことってあるよね」って共感を呼ぶ書き方。
・・・うまいなあ。

(75点)

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「暗鬼」 乃南アサ
よそで見かけて、なんとなく読み返す気になった本。再読。

暗鬼 (文春文庫)暗鬼 (文春文庫)
(2001/11)
乃南 アサ

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曾祖母を筆頭に、8人家族のもとへ嫁ぐことになった法子。人間関係に悩むかと思いきや、待っていたのは家族全員、あたたかく優しい家庭だった。しかし、近所で起きた心中事件に、この家の人間が関係しているのではないか、という疑いが法子の胸に芽生え・・・。

一見穏やかな家庭に、狂気の人間が潜んでいて・・・とかいう、オーソドックスなミステリ、だったら面白いだろうなあ。乃南アサだし。
それよりもっと陰湿な、家の根源にかかわる、血の存続にかかわるお話です。
しかし、乃南氏、こういうドロドロした感じもうまいんだよなあ。
気丈な主人公が、だんだん心が折れていくところ、怖くて面白いです。

初出は1993年。15年前の話です。
でも一度も「古い」と思わなかった。あえて言うなら携帯電話が登場しないとこくらいかな?
ただし、これからこういう系統の話はだんだん書かれなくなるでしょう。マスコミでさんざん解説されつくした話ですし。

(70点)

※追記はネタバレです※

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テーマ:読書感想 - ジャンル:本・雑誌
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ボクの町 乃南アサ

読み始めてから気付いたんですが、どうやら駆け込み交番の主人公高木聖大くんの交番実習のときの話、みたいです。何だよ知ってたら順番に読んだのにー。どこにもそんなこと書いてなかったじゃないかー。というボヤキは置いといて、

ボクの町 ボクの町
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:1998-09

もののはずみで警察学校に入ってしまった高木聖大は、卒業配置で駅前交番に配置される。この交番、駅前だけあって人通りは多いし、めちゃめちゃ忙しい。ところがまだ学生気分が抜けない上に元から短気な聖大は、同期の手柄にあせりすぎて、トラブルを起こしてしまう。そのころ、町内では不審火が相次いで・・・。

現代っ子気質の主人公が、警察という組織に馴染めなくて摩擦を繰り返すものの、やがて使命感に目覚める、という教科書のような小説。読み応えはあるんだけど、正直、物足りない。

これはもう単純に順番の問題だと思われます。主人公の高木に魅力が足りないの。「いるいる、こんなヤツ」って思いながら読めるんだけど、「他の小説にも」になっちゃってる。これを読んでから『駆け込み〜』を読んでたら「ああ、あのストーリーこういう風に化けたんだ、主人公よりこっちのキャラの方が魅力あるよね、成る程ね〜」と好意的に読めたと思われます。(というか、発表順的にはそっちが正しい)

正直に言おう、乃南氏の警察もの、「音道貴子シリーズ」が一番面白いです。凍える牙が最初にあるの。あれと比べたら、やっぱどれもこれも見劣りするだろうと思います。

(70点。悪くはないんだけど、プラス要素が足りない。惜しい!)

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風の墓碑銘 乃南アサ
風の墓碑銘 風の墓碑銘
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2006-08-30

新潮社

「凍える牙」「鎖」に続く女刑事音道貴子シリーズ長編第三弾。

東京の下町の解体工事現場で発見された白骨死体。貴子が担当となって捜査していた所、現場の地主今川が殺害される。痴呆が始まっていて会話が成り立たない時もあるという老人を、誰が、何故? 配属された捜査本部で、貴子はまた滝沢と組んで捜査に当たることになる。

「凍える牙」、大好きでした。男社会の中で理不尽な目にあう貴子。本人、悪意を持っているつもりはないものの、女となんかやってられるかという感情むき出しにした滝沢。そして、クライマックスの、静かな、張り詰めた空気。映像が目に浮かぶような描写。

「鎖」は、「〜牙」に比べると、長くて重くて暗い。一見物分りがよさそうに見える男の方が頑迷だったりする。精神的に追い詰められていく貴子が痛い。前作では全然貴子を信用していなかった滝沢が、変化していく過程もいい。読み応えのある作品。

短編集を数冊はさんでの今作なんだけど、事件としては派手さに欠ける、かな。貴子と滝沢、二人の視点から見た事件が変わりばんこに語られるんだけど、ラストに向けてのカタルシスというか、そういうものに欠ける。じゃあどんな人にお勧めか。貴子と滝沢が好きな人、としか言いようがない。この一作を突然読んで面白いのか見当がつかない。一作通してお互いの関係が歩み寄っていく、その過程が楽しい。前段はあった方が読みやすいと思う。

ただ、これだけ読んで「訳わかんない」とかいうものではないです。必要なラインはクリアしている。私は「音道貴子シリーズ」が好きで追いかけているからこんな感想になるけど、違う意見の人もいるんだろうと思います。

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駆け込み交番 乃南アサ
駆けこみ交番 駆けこみ交番
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2005-04-01

新潮社

前回に続き帯って大事だよなーと実感した一作。

去る老婦人が深夜の交番に駆け込んできたのをきっかけに、何故だかお手柄続きの勝ち組新米巡査・高木聖大。東京は等々力のパワフル老人七人衆に可愛がられるようになった聖大は、ヤル気のない先輩に悩まされつつ所轄を駆け回るうち、十数年来の未解決事件を解く糸口をつかんでしまった。さあ、聖大、どうする!?

これが帯の文章。これを読むと、なんだか、「未解決事件」がさも重要な感じ、しませんか?

新米巡査の聖大が、「とどろきセブン」を名乗る、自分の経験を生かして地域の人たちの役に立っている老人集団と知り合う第一話。児童虐待を何とかしようとするものの、警察では「民事不介入」の前提に縛られて何も出来ずにいる内に、とどろきセブンの人たちが何かしたらしく解決してしまった第二話。とどろきセブンの過去が語られる第三話。内容は伏せますがまあ大団円の最終話。と、起承転結のお手本のようなストーリー展開、なんですよね。

例の「未解決事件」、ストーリーの底をちらちらと流れ続けておりますが、そこがメインの話ではない。もともと「棟梁」だったり、「植木屋」だったりしたとどろきセブンの人たちが、いかに地域を大事にしているか、助け合って楽しく生活しているか、そういう話。こんなおじいちゃんおばあちゃんになれるよう年をとらなきゃな、と思える本。

全体に、あったかくて、ほんわりしている語り口の話です。語り手の聖大の性格のおかげかもしれない。扱っている事件は陰惨なものも結構あるんで。

帯とか、文庫の見返しとかにある作品紹介って結構参考にして本を選ぶんですが、今回は外しました。私はいいほうに外れたんでいいんだけど、期待はずれだった人もいるんじゃないのかな〜。

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