![]() | 流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (2008/04/15) 上橋 菜穂子 商品詳細を見る |
王の奸計により父を殺された少女バルサと暗殺者の魔の手から親友の娘バルサを救ったがゆえに反逆者の汚名を着ることになったジグロ。ふたりは故国を捨て酒場や隊商の用心棒をしながら執拗な追ってをかわし流れあるく。その時々にであった人々もまたそれぞれに過去を持つ流れ行く者たちであった。番外編にあたる守り人短編集。(amazon ・内容紹介より)
いないとは思いますが、「守人」シリーズを読んでいない人は、まだ読まないほうがいいと思います。
かのシリーズでは女傭兵として活躍していたバルサの、幼いころのお話です。
タンダを主人公とした農村での中編と、バルサを主人公にした傭兵ぐらしの中篇、それに彩を添える短編2本といった構成です。
しかし。
短いからといってすらりと読み捨てられる話ではなく、なかなか深いものを持っています。
特に感心したのが長さ的には短編といっていいだろう、「ラフラ<賭事師>」。
酒場兼賭場に、腕を買われて雇われている老賭事師。バルサの勘のよさを見抜いた彼女とバルサとの交流は、純粋な好意からだったのだけど。
それとは別に、「雇われている」ということの枷。50年来続けてきた勝負に、決着をつけるべく持ち込まれた条件でさえ、雇い主に断らなくては受けることの出来ない彼女。
善良な男の好意が、必ずしも人のためになるわけではない、という悲しさ。
この短編の、ラスト2ページが、この作者の真価だと思う。
どこまで感情を書き込むのか。どの情景に絞るのか。かかれなかった部分を、いかに読者の想像力にゆだねるのか。計算された文章と、それを支える圧倒的な描写力。
甘い話ではないけれど、読めば読むほど味が出てくる感じがします。
善悪二元論ではないファンタジー。
子供のころこれを読める子は幸せだと思う。
(85点)
とある有名な外国産ファンタジーが、あまりに宗教色が強くて幻滅させられた私。このシリーズは引っかかりなく読める、数少ないファンタジーです。
ランキング参加してます。


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