![]() | 追伸 (2007/09) 真保 裕一 商品詳細を見る |
ギリシャへ単身赴任中の夫の下へ、妻から離婚したい旨をしたためた手紙が届く。納得いかない夫は、妻へ手紙を送るが・・・。
全編手紙、という意欲作。
顔をあわせてでは語らなかったであろう自分の過去への悔恨、家族への複雑な思い、離婚についての考えが、手紙なだけに易しい語り口調で語られる。
妻の、離婚したいと言う考えの奥のほうに、「昔殺人の疑いで逮捕されていた祖母」への複雑な感情があるらしい、とわかったところで、第二章はその祖母と、夫である祖父との間でやり取りされた手紙へとうつる。
いや、上手い上手い。
下手な作家なら単調になりがちな形態なのに、文中に引っ張っていく力はさすが。
第二章の、「戦後すぐ」の時代が落としている影のようなものも、興味深かったし。ただ、文章はちょっと近代風すぎるかな。ここ、こだわりすぎたら読みにくくなるんだろうな。この章、ミステリとしても良質です。
ただし、「今時の人間がこれほど長々と文章を書き、それをやり取りするか?」という疑問は残りました。私なら、これだけ分厚い手紙が夫から届いたら、「(精神的に)危ないのでは?」と引いてしまうかもしれない・・・。それとも離婚間際の夫婦はこのくらい語るものを持っているのか。いや、語り合いたいという欲求があるうちは離婚しない気もするんだけど・・・。
(75点)
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