しゃぼん玉 (新潮文庫) (2008/01/29) 乃南 アサ 商品詳細を見る |
伊豆見翔人は、金ほしさに強盗を繰り返すような無目的な人生を送っていた。ある日、引ったくりをしようと持ち出したナイフで、女性を刺してしまい、逃亡生活に入る。流れ着いた山村で、怪我をした老女を助け、そのままその家に居候することになるが・・・。
基本のストーリーはありきたりといっていいと思う。
無軌道に生きている若者が、田舎で純朴な老人たちに触れ、生きなおすきっかけを得る話。
平凡な作家が書いたら、平凡につまらない話。
ところが。
この主人公、イズミがあまりに馬鹿で、いいかげんで、空っぽで、宮崎が四国だと思うくらい常識がなく、本当にどうしようもないんだけど、素通りできない吸引力があるのです。これは、作者の筆力ですね。
親の代の嫁姑問題に端を発して、そこから誰にも愛されず、大事にされず、何かを大事にする方法も知らず、空っぽのままで流されてきた主人公のイズミ。
なんかこう、読んでいるうちに愛着のようなものがわいてきたりして。
そして脇を固める老人たちがいい味出しているんですよ。そうだった、私はこういう老人の出てくる話に弱いんだった・・・。
人は誰でもどこからでもやり直せる、という祈りを描いた物語。
こういうの、好きなんだよねえ・・・。
(80点!)
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