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「ルピナス探偵団の憂愁」 津原泰水
雑誌掲載のほうは読んでたんだけど、いまいちピンとこなかった。まとめて読んだら何か違うかな? と試してみたんですが。

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)
(2007/12)
津原 泰水

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高校時代「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた少女3人と少年1人。卒業後、それぞれの道を歩んでいた4人のうち、1人が不治の病で世を去った。久々に顔を合わせた3人に残されたのは、彼女が死を前にして百合の樹の林に造らせた、奇妙な小路の謎だった――。第1話「百合の木陰」から時を遡り、高校卒業式を目前に殺人が起きたルピナス学園で、彼らが授かった“祝福”を描く第4話「慈悲の花園」までを辿る。津原泰水だからこそ書き得た、少年少女たちの「探偵」物語。 (東京創元社書籍案内より)

これがまた、びっくりするくらいよかった!
雑誌と比べたわけじゃないんで、どのくらい加筆してるのか確かめていないんだけど、大まかなストーリーは変わってない。でも、なんか違うのですよ。

第一話冒頭で、主要人物の一人がいきなり死亡して、しかも彼女の生前の不思議な行動の謎を解く、ストーリーとしてはオーソドックスながらシリーズものとしてはありえない展開。そこから徐々に話がさかのぼって、ああ、こういう仕掛けなのね、と思いながら読んでたら。

最後の話、第4話、時系列的には最初の話、そのラストシーンから巻頭の話にぐぐっと引っ張られて。
ただでさえ、「卒業」という泣かせる場面なのに、ああ、こうつながってるのか、ちゃんとつながって生きているのか、と思うともう、ほろりとしたよ。

それぞれの話をただミステリとして読むと「まあまあ」程度なのだけど、その合間に見え隠れする死んでしまった彼女と、その友人たちの心のありようが実に・・・じつにこう、胸をつく感じなのです。
終わりが見えてるからこそ、描ける物語はあるのだと。

(85点! 満喫)

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「妃は船を沈める」 有栖川有栖
ちょっと今までと違うタイトルだな? と思ったら「白いウサギが逃げる」の出版社か。なるほど、ちょっとカラーが違うのね?
妃は船を沈める妃は船を沈める
(2008/07/18)
有栖川有栖

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港から、海へダイブした車。中から死体が見つかった。それだけなら、事故か自殺だが、死体から睡眠薬が検出されたので事件の目が出てきた。さらに、死亡した彼には高額な保険金がかけられていた。火村准教授と、作家アリスに捜査協力の声がかかり・・・。

ああ、准教授になってしまわれた(涙)。
という、ストーリーとは関係ないところでショックを受けた私。断然、「助教授」のほうが響きとして好きだ。そのうち慣れるんだろうけど。

有名なホラー「猿の手」がモチーフ。3つの願いを聞いてもらえる代わりに、悪いことが起こるというあれ。
前半があらすじに書いた事件。後半は、使用されていない離れの中、施錠されたドアの中で射殺された死体が発見された事件。共通の登場人物がいるけれど、味わいとしては長編というよりは中編2本。

この話の売りは、「火村准教授の過去」。今までもちらちら見えてたけど、この話が一番大きなモチーフとして書かれている。
知りたいけど、明らかにされたらシリーズ自体が終了しそうで困った。

後半のトリックは、それほど深読みしなくても解けました。前半も、それほど難易度は高くないです。

(期待してたけど微妙な出来。78点)

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「アーモンド入りチョコレートのワルツ」 森絵都
森絵都氏の本は久しぶり。なかなか児童書の棚を覗きにいけないのが原因。

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)
(2005/06/25)
森 絵都

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ピアノ教室に突然現れた奇妙なフランス人のおじさんをめぐる表題作の他、少年たちだけで過ごす海辺の別荘でのひと夏を封じ込めた「子供は眠る」、行事を抜け出して潜り込んだ旧校舎で偶然出会った不眠症の少年と虚言癖のある少女との淡い恋を綴った「彼女のアリア」。シューマン、バッハ、そしてサティ。誰もが胸の奥に隠しもつ、やさしい心をきゅんとさせる三つの物語を、ピアノの調べに乗せておくるとっておきの短編集。
(「BOOK」データベースより)

私が一番好きなのは、「子供は眠る」。
いとこの男の子たちが集まっておくる夏休みの共同生活。楽しそう、と思ったけど、そこにも人間関係のバランス感が求められていて。人間は生まれながらにして平等ではないし、それを乗り越える力も子供たちは手に入れなくてはいけなくて。
章くんの、特別意識と、「それじゃいけない」って気持ちのせめぎあい、はっきりとかかれてないところがまた切なかった。

小粒ですが、いい作品です。大人が読んでも切ないぞー。

(78点)

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「一瞬の風になれ」 佐藤多佳子
面白くない、わけがない。

一瞬の風になれ(全3巻セット)一瞬の風になれ(全3巻セット)
(2007/06)
佐藤 多佳子

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主人公の新二は、天才的なサッカープレイヤーの兄の背を追いかけ、サッカーをやってきたが、「自分にサッカーの素質はない」と見極める能力には恵まれていた。高校入学に当たって、選んだのは近所の公立高校。同じ高校に通うことになった、幼馴染の天才スプリンターとともに、陸上部に入る。目標はただ、速くなること・・・。

三分冊で、結構ボリュームはあるのに、それを感じさせない軽妙な語り口がたまらない本。

メインの種目は「400メートルリレー」。100メートルずつ、4人の選手でバトンをつなぐ競技。
個々人の素質はもちろんだけど、バトンをつなぐタイミングなど、「チーム」としてのまとまりも要求される、難しい競技。

新二は、陸上でも「天才」と呼ばれるほどの才能は、ない。
あがり症だし、周りは見えてないし、自分の才能がどの程度なのかを見際める目も、最初はない。
それでも、天性の関節の丈夫さや練習をする才能などには恵まれていて、どんどん走る楽しさに目覚め、タイムも縮めていく。

そしてよかったのが、主人公だけの話に終わらないところ。
「俺が走るよりあいつが走った方が、次はともかくその次の大会で勝てる確率が高くなる」といって自らメンバーを降りる決意をするチームメイト。
チーム内でも際立って遅いのに、もくもくと練習に励み、「少しずつでも早くなってるのがうれしい」といって笑う女生徒。
0.1秒の差で上の大会に進めない、悲しみとあきらめ。
3年、部活を続けることによって、そういったいろいろな人たちの思いを背負っていることを自覚し、「次へつなぐ」ために走る主人公たち。
才能のあるなしが数字で現れる、シビアな競技。それでも、「一緒に汗を流した」時間は尊く、走る仲間たちに声援を送りたくなる。
ちゃんと、この物語のどこも無駄にならずに、最終巻の山場へとつながっていく。ただ、走る。少しでも早くなるために。


どう言葉を尽くしても、この本の面白さは言い尽くせないと思う。
ぜひぜひ読んでみて。面白いから。

(95点)

カテゴリ:佐藤多佳子
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「夏の少年」 川西蘭
ここ一月、カウンターが異常な回り方をしてます。これが夏休みの「読書感想文効果」かー。学生の皆さんには余り参考にならない文章ですまないねえ。

夏の少年夏の少年
(1997/07)
川西 蘭

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父の死。それは少年時代の終りの幕開けだった。炎上する秘密の小屋、夜の城跡での肝試し、少女の弾いたショパン。夏の夜の花火のように美しく儚い、鮮やかな「少年時代」の残像を描いた、著者初の連作小説。(「MARC」データベースより)

大人になってから、「あの夏はこうだった」と振り返って書かれた連作集。
今現在の生々しさや激しい感情の揺れはないけれど、子供が大人になるひと夏を書いた佳作。
子供たちが集まって「秘密基地」を作ったり、それが思いもよらなかった欠陥を持ってたりして、ああ、「昔の少年」の話だなあ、と思った。

うーん。面白かったけどあと一歩。考えてみたら今から10年前の作品。最近書かれた短編を読んでいたく感服したてから、他の作品はどうかな?と読んだんだから、昔のが物足りないのも仕方ないかも。

(72点)

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